篠原鳳作句集 昭和六(一九三一)年二月
稻刈に花火とんとんあがりけり
[やぶちゃん注:昭和六年二月発行の『泉』及び『京鹿子』発表句。先に示したように何故か、一月の「地下室は踊の場(には)や犬橇(のそ)の宿」(一月『泉』)と「一時雨一時雨虹はなやかに」(一月『泉』)の句の間に掲げられてある。「稻刈」という前年(以前)の秋の景ではあるが、掲載位置の不審自体はそれでは解けない。]
しぐるるや畝傍は虹をかかげつつ
[やぶちゃん注:「畝傍」は畝傍山であろう。奈良盆地南部奈良県橿原市にある標高一九九メートルの山で耳成山(みみなしやま)と天香具山(あまのかぐやま)とともに大和三山の一つ。但し、この月以前の年譜的事実からは奈良行を確認出来ず、何時の嘱目かは不明。]
寒肥やひぐまの如き大男
[やぶちゃん注:「寒肥」は「かんごえ」で寒中に農作物や庭木に施す肥料。かんごやし。季語としては冬である。人肥の桶をぶら下げた逞しい農夫が盛んにそれを撒いているさまであろう。まさに臭ってくる生き生きとした諧謔味もある句である。]
[やぶちゃん注:以上、三句は二月の発表句。]
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