僕の詩 山之口貘
僕 の 詩
僕の詩をみて
女が言つた
ずゐぶん地球がお好きとみえる
なるほど
僕の詩 ながめてゐると
五つも六つも地球がころんでくる
さうして女に
僕は言つた
世間はひとつの地球で間に合つても
ひとつばかりの地球では
僕の世界が廣すぎる。
[やぶちゃん注:初出は昭和一三(一九三八)年二月発行の『むらさき』であるが、本詩集の逆編年体の順列からは前後数篇の詩の初出を見ると、一見、齟齬があるように見えるが、バクさんは本詩集後記で『作品の配列を、卷尾の方から卷頭へと製作順にして置いた』とあって発表順とは述べておらず、バクさんが恐るべき長時間をかけて推敲することから、これらは確かに製作順なのである。松下氏の書誌データには『掲載誌の目次タイトルは「私の詩」。「詩」に「うた」のルビあり』とある。
「定本 山之口貘詩集」では最終行の句点は除去されている。【2014年6月13日追記】思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証し、注を一部改稿した。【二〇二四年十月十八日追記・改稿】国立国会図書館デジタルコレクションの山之口貘「詩集 思辨の苑」(昭一三(一九三八)年八月一日むらさき出版部刊・初版)を用いて(当該部はここから)、正規表現を確認した。]
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