萩原朔太郎「ソライロノハナ」より「若きウエルテルの煩ひ」(5)
白百合の君と別れし夜
よめる
み別れに奉る夜のましろ百合
君を一人の姉とも知れな
君は去りぬ殘るはわれと小さき世の
月も月かは花は花かは
[やぶちゃん注:朔太郎満十六歳の時、『文庫』第二十四巻第三号(明治三六(一九〇三)年十月発行)に「上毛 美棹」名義で掲載された九首の三首目、
君は去りぬ殘るは吾と小さき世の月も月かは花は花かは
と分かち書きを除けば相同歌。]
その舟よ我等が棹にとゞめあへず
ついに空しく流れて去りにき
[やぶちゃん注:「ついに」はママ。]
大御代はこゝに美し春は戀に
かたちどられて咲く櫻花
足んぬ智はあへて願ふ歌の幸(さち)
來ん世思はずいらず桂も
[やぶちゃん注:朔太郎満十七歳の時の『文庫』第二十五巻第六号(明治三七(一九〇四)年四月発行)に「上毛 萩原美棹」名義で掲載された九首の六首目、
足んぬ智は、敢えてしねがふ歌の幸。來む世思はず、欲らず桂も。
の類型歌。]
才(ざえ)たらで御國はぐゝむ歌もなし
身は弱うしてよる胸もなし
[やぶちゃん注:朔太郎満十六歳の時の、『明星』卯年第十一号・明治三六(一九〇三)年十一月号の「紗燈涼語」欄に「萩原美棹(上毛)」の名義で掲載された三首の第二首目、
かよわくて御國(みくに)はぐくむ歌もなし身は孤獨(ひとり)にてようる胸もなし
の類型歌。]
この戀よ亂れて末は知らなくに
おどろにまとふ紅づたのごと
[やぶちゃん注:朔太郎満十七歳の時の、『文庫』第二十四巻第六号・明治三六(一九〇三)年十二月に「上毛 萩原美棹」の名義で掲載された十四首の十一首目、
この戀よ、亂れて末は知らなくに、おどろにまとふ紅づたのごと。
の表記違いの相同歌。]
草に伏して美しひとは泣きもやまず
別れもあへず野は暮れせまる
[やぶちゃん注:前歌と同じく、『文庫』第二十四巻第六号・明治三六(一九〇三)年十二月に「上毛 萩原美棹」の名義で掲載された十四首の十一首目、
草に伏して美し人は泣きもやまず、別れもあへず、野はくれせまる。
の表記違いの相同歌。]
« 飯田蛇笏 靈芝 大正六年(二十五句) | トップページ | 日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十一章 六ケ月後の東京 23 日本料理屋での晩餐と芸妓の歌舞音曲そして目くるめく奇術師の妙技 »

