橋本多佳子句集「海燕」昭和十五年 南紀
南紀
貝ひかり冬の薊の濃きを得ぬ
わが眉に冬濤崇(たか)く迫り來る
冬濤のうちし響きに身を衝たる
子が驅り吾驅り北風(きた)の波うてり
眞夜の雛われ枕燈(まくらび)をひくゝとぼし
[やぶちゃん注:「燈」は底本の用字。]
女(め)の雛描かれて男の袖に倚り
[やぶちゃん注:この句では「雛」は「ひひな/ひいな」と読んでいよう。]
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