橋本多佳子句集「海燕」昭和十四年 妙高高原 鐡路
妙高高原
鐡路
夜の鐡路乘りかへてより雪深き
寢臺車眞夜雪ふかき驛を見たり
寢臺車手洗場(トワレ)に雪原曉けてゐる
[やぶちゃん注:「トワレ」はフランス語「toilette」。]
雪原を焚きけぶらして鐡路守る
月ひかり雪原曉くる驛に降(お)る
子が遊び雪原の雪驛にも敷く
除雪車のプロペラ雪を嚙みてやすむ
信号手靑旗に除雪車をゆかす
日輪に除雪車雪をあげてすすむ
[やぶちゃん注:以下の「橇行」及び「赤倉觀光ホテル」句群とともに、昭和一四(一九三九)年一月七日からの長女淳子と四女美代子を連れての妙高高原赤倉観光ホテルでの嘱目吟。年譜によればホテルまでは雪上車に乗車したとあり、橇やスキーを楽しんでいる。]