明恵上人夢記 33
33
一、又、眞惠僧都(しんゑそうづ)之許に到る。饗膳を設けて、成辨幷に義林房(ぎりんばう)を饗應せらると云々。
[やぶちゃん注:「一」という項を設けておいて「又」と記すのはここが初めてで(以下、しばしば見られる)、これは同日中に複数の夢(若しくは連続していたものの明恵自身がその連続性を思い出せなかったのかも知れないが、敢えて明恵が項を起こすというのは別な夢であると考えた方がよい)を見たことを意味すると考えてよい(二つ後の「35」夢は「同十日」とあり、この前の「33」夢は「同月八日」であるから、「九日」としないのは「32」夢に続いて、建永元(一二〇六)年六月八日深夜から九日未明にかけて見た夢ということになる(次の「34」夢も同じでこの「33」の後に九日早暁に見た夢と考えてよいであろう)。
・「眞惠僧都」「33」夢注に示した通り、底本には『長良流の従五位下藤原宗隆男で東寺一長者となった大僧正法務真恵か』とある(但し、彼が東寺長者に補任されたのは明恵の没六年後の嘉禎四・暦仁元(一二三八)年九月である)。
・「義林房」既注。明恵の高弟喜海。]
■やぶちゃん現代語訳
33
一、また、その後に同じ夜、続けて見た別の夢。
「私は真恵僧都(しんえそうず)の元を訪ねている。見ると僧都は既に豪華な饗膳の座を設けておられ、私並びに義林房二人を如何にも懇ろに饗応なされるのであった。……」
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