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2014/02/19

篠原鳳作句集 昭和六(一九三一)年八月


梭の音しづかに芭蕉玉ときぬ

 

梭の音靜かに芭蕉玉ときぬ

 

[やぶちゃん注:前者が八月刊の『馬酔木』掲載の、後者が翌九月刊の『泉』掲載の句形。無論、言わずもがなながら、この「梭」(ひ)は芭蕉布(ばさーじん)を織る機(はた)のそれである。]

 

靑芭蕉吹かるる音と機音と

 

炎天や甘蔗のはたけは油風

 

[やぶちゃん注:「油風」(あぶらかぜ)は「油まじ」「油まぜ」ともいい、油を流したような静かな南寄りの風をいう語。「まじ」は南又は南西の風、「まぜ」「まじの風」で、多くは西日本での謂い(季語としては夏)。]

 

   嘉手納製糖工場附近

縱横にはせ交ふトロや甘蔗の秋

 

[やぶちゃん注:「トロ」はトロッコのこと。]

 

   琉球燒

踏ん張れる獅子の口より蚊火煙

 

[やぶちゃん注:「琉球燒」一応、ウィキの「壺屋焼をリンクさせておく(但し、同ウィキには一ヶ所も「琉球焼」という語は用いられてはいない)。この那覇の壺屋焼が琉球の焼き物の本流であることは間違いないのだが、実は現在では「壺屋焼」と「琉球焼」は区分された別箇な伝統工芸製品指定を受けているからである。その論争記事は一九九八年三月二十八日附『琉球新報』の伝統めぐり論争、琉球焼と壺屋焼に詳しい(個人的には何か残念な論争である気がする)。

「獅子」「しーさー」のこと。無論、ここは「しし」と読んでいる。]

 

炎天や水を打たざる那覇の町

 

浦風のあはれに強し走馬灯

 

守宮啼くこだまぞ古き機屋かな

 

[やぶちゃん注:ヤモリは沖縄言葉(うちなーぐち)で「やーるー」と呼ぶ。宮古島在住の「さんごのたまご」さんのブログに写真入りで「ケケケケケケケ」と鳴く旨の記載がある。女性の方の個人サイト「たびかがみ」の解説ヤモリいう虫」によれば、本邦には少なくとも十四種以上が棲息すると考えられ、その中に鳴くことに由来すると思われるナキヤモリ属 Hemidactylus があり、以下の同属の二種を掲げておられる(一部データや情報を「国立環境研究所」その他のそれと差し替えさせて戴いた)。

タシロヤモリ Hemidactylus bowringii

分布は奄美諸島・沖縄諸島・宮古諸島・八重山諸島に分布するとされるほか、台湾・東南アジアなどに棲息。人家付近で夜間照明に集まり、昆虫を食べること以外には生態は殆ど知られていない。全長は九〇~一二〇ミリメートルで暗い場所で見ると明瞭な横帯が現れて見え、一見「虎柄」のように見える。一部のネット記載には殆んど鳴かないともある。

ホオグロヤモリ Hemidactylus frenatus

原産地ははっきりしないが分布は奄美諸島・沖縄諸島・大東諸島・先島諸島のほぼ全ての有人島および小笠原諸島で人為的な移入による外来種であり、世界的分布域は大陸の内陸部を除く熱帯・亜熱帯域広範に及ぶ。民家などの建造物を好み、かなりの密度で棲息し、逆に人里から有意に離れた自然林内ではあまりみられない。「ケケケ」又は「チッ、チッ」と鳴き、灯りに集まり虫などを摂餌する。全長は九〇~一三〇ミリメートルで南西諸島では最も普通にみられるヤモリである。

これらから見るに、鳳作の聴いた「こだま」するほど吃驚したそれは後者ホオグロヤモリ Hemidactylus frenatus の可能性が高いか。南洋系と思われる種を突いて鳴かせている動画も幾つかあるが、何となくいじめているようで不快であるからリンクしない。しかしかなり大きな声で高い鳴き声ではある。]

 

松風を蘇鐡のみきにとらへけり

 

藻の如く靡く芭蕉や大南風

 

[やぶちゃん注:「大南風」は「おほみなみ(おおみなみ)」と読む。夏の湿って暑苦しい季節風のこと。「みなみ」と「風」の読みを省略する呼称はもとは漁師や船乗りの用語であったことに由来する。]

 

實を垂れて枯れそめたる芭蕉哉

 

[やぶちゃん注:「垂」の字の旧字体「埀」をまともに使っている作家は私の知る限りでは非常に少ない。以下、この注は略す。]

 

遠雷にこたへそよげる芭蕉哉

 

[やぶちゃん注: 以上、十二句は八月の発表句。]

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