篠原鳳作句集 昭和六(一九三一)年十一月
門川のあふれてさみし魂祭
荷のすぎし精靈舟となりにけり
大風のあしたを出でて耕せり
月の江や波もたてずに獨木舟
吹きあほつ日覆のうちの櫻島
[やぶちゃん注:「吹きあほつ」ネット上で発見した歌人長澤英輔氏の歌集の一首、
夏暮るる軒の簾を吹きあほつ雨風涼しきちきょうの花
から、「吹き煽る」の謂いであることが分かる(老婆心乍ら、「きちきょう」とは「桔梗」のこと)。とすればこれは「あふつ」の歴史的仮名遣の誤りかと思われる。「煽(あふ)つ」は現代音「あおつ」で他動詞タ行四段活用の「風が吹き動かす」「風のために火や薄い物が揺れ動く。ばたばたする」の古語で、自動詞の「あふる」の転かとある(但し、この意に限ってみれば「あふる」との自・他動詞の明確な区別は国語学嫌いの私には判然としない)。
ここまでの五句は十一月の発表句。]
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