ゆきしづり
「雪垂り」 ゆきしづり(ゆきしずり)
積もった雪が木の枝などから辷り落ちること。また、その雪。ゆきしずれ。「しづる」自体が同義を持つ自動詞で古語である。とても味わいのある響きだ。
龍之介のそれは人が落すのだからシチュエーションは異なるが、不図、龍之介が雪を「しづらす」のを僕は今朝、幻視したのであった。……
越 し 人
彼は彼と才力(さいりよく)の上にも格鬪出來る女に遭遇した。が、「越し人(びと)」等の抒情詩を作り、僅かにこの危機を脱出した。それは何か木の幹に凍(こゞ)つた、かゞやかしい雪を落すやうに切ない心もちのするものだつた。
風に舞ひたるすげ笠(がさ)の
何かは道に落ちざらん
わが名はいかで惜しむべき
惜しむは君が名のみとよ。
(芥川龍之介「或阿呆の一生」「三十七」)
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