日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十一章 六ケ月後の東京 24 花市の花掛け
六月十五日。大学から遠からぬ、ある寺院で花市が開かれた。道路の両側には、あらゆる種塀の玩具や、子供の花かんざしや、砂糖菓子や菓子を売る、小さな一時的の小屋が立並び、道路はあらゆる種類の花の束や、かたまりで、殆どふさがっていた。機嫌のよい群衆が、あっちへ行ったりこつちへ来たりしていたが、人力車を下りて歩き出したジョンには、日本人の老幼が群をなして、感嘆しながらついて来た。ある小屋には木を植えた小さな植木鉢と、紙片を書いた物とがある懸垂装置があった。この品は高さ三フィートばかり、不規則な輪郭の薄い木の板で出来ていて、それに小さな楯を支持する枝が固着してある。如何なる叙述よりも、図324の方がよく判るであろう。木材は熱で褐色にしてあり、古そうに見えた。
[やぶちゃん注:「三フィート」約九十一センチメートル。]
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