第一印象 山之口貘
第一印象
魚のやうな眼である
肩は少し張つてゐる
言葉づかひは半分男に似てゐる
歩き方が男のやうだと自分でも言ひ出した
ところが娘よ
男であろうが構ふもんか
金屬的にひゞくその性格の音が良いんぢやないか
その動作に艷があつて良いんぢやないか
さう思ひながら、ひたひにお天氣をかんじながら僕は歸つて來る
僕は兩手をうしろにつつぱつて僕の胴體を支へてゐる
僕は椽の日向に足を投げ出してゐる
足の甲に蠅がとまる
蠅
蠅の背中に娘の顏がとまつてゐる
[やぶちゃん注:【2014年月日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。初出注記をかく追加した。】初出は昭和九(一九三四)年五月発行の『セルパン』。]