杉田久女句集 127 櫓山荘っぽい句
紅葉狩時雨るゝひまを莊にあり
[やぶちゃん注:「莊」はつい、櫓山荘を想起してしまう。何故、「しまう」かであるか?――そう想起すると、この句柄には必ずしもしっとりと落ち着いたものとしての感懐の背後に、そうでない微かな心の動きが感じられようになってしまうからである。しかも私はそれを秘かに楽しんでもいるのであるが。]
知らぬ人と默し拾へる木の實かな
[やぶちゃん注:これもやはり櫓山荘っぽい。]
髮よせて柿むき競ふ燈下かな
[やぶちゃん注:大正八(一九二九)年「燈」は底本の用字。角川書店昭和四四(一九六九)年刊「杉田久女句集」は下五を「燈火」とする。従えない。この句の背景は作句年代から櫓山荘ではない。]
甕たのし葡萄の美酒がわき澄める
[やぶちゃん注:これもまたしても櫓山荘っぽい。但し、本句集は編年型ではあるものの、季題別編集であるから、これらの句が全く別々のシーンの中で作られた(それは全く同じか幾つか同じ場所かも知れず、また、そうではないのかも知れない)可能性も当然あるわけではある。]
« 杉田久女句集 126 唐黍を燒く間待つ子等文戀へり | トップページ | 杉田久女句集 128 くゞり摘む葡萄の雨をふりかぶり »