飯田蛇笏 靈芝 昭和七年(七十二句) Ⅴ
花とつて臘白の頰や墓詣
[やぶちゃん注:「臘白」不詳。従って句意汲めず。識者の御教授を乞う。蛇笏に散見されるホラー調の句から考えれば、凄絶に抜けるような白さを持った墓参の女の頰を「白蠟(びゃくろう)」と表現したものとも考えたが、底本自体がこの「臘」であること(「臘」に「蠟」の意はない)、文字列が「臘白」であるのが不審。]
盆過ぎのむらさめすぐる榛の水
[やぶちゃん注:「榛」は音「ハン」、落葉低木のブナ目カバノキ科ハシバミ属
Corylus ハシバミ Corylus
heterophylla var. thunbergii を指すが、実は本邦ではしばしば全くの別種である落葉高木のブナ目カバノキ科ハンノキ Alnus japonica に誤って当てる。この光景は村雨の後に垂れ落ちてくる雨滴を詠んでいるもののように思われ、後者を指しているか。]
瀧川に沿うたる旅や蟬しぐれ
夏菊に透垣をうつ狐雨
神農にさゝげて早き胡瓜かな
[やぶちゃん注:この句、篠原鳳作の昭和八(一九三三)年六月発表の、彼の俳句開眼の句とされ、代表作としても知られ、私も好きな一句(リンク先は私の電子テクスト)、
炎帝につかへてメロン作りかな
と非常によく似ているように思われる。これはちょっと偶然とは思われない。鳳作のそれは、実はこの蛇笏のモノクロームの画像を、確信犯で総天然色ハレーション化させたインスパイアだったのではあるまいか?]
砂丘沃ゆ西瓜の黝き蜑の晝
[やぶちゃん注:「沃ゆ」は「こゆ」(肥ゆ)、「黝き」は「くろき」と訓じていよう。「黝」は青黒い色をいうから色彩は自然。この句、前の句と初出誌が同一かどうかは分からぬが、どうであろう、
神農にさゝげて早き胡瓜かな
砂丘沃ゆ西瓜の黝き蜑の晝
炎帝につかへてメロン作りかな
と三句並べてみると、ますます私には私の推測が確かなものに思われてくるのだが……。]
採る茄子の手籠にきゆアとなきにけり
葉びろなる茄子一ともとの走り花
[やぶちゃん注:「走り花」不詳。茎から逸れて出た花か? 早咲きの謂いでは実がなっているからおかしい。識者の御教授を乞うものである。]
格子戸に鈴音ひゞき花柘榴

