萩原朔太郎「ソライロノハナ」より「若きウエルテルの煩ひ」(13)「はなあやめ」(Ⅲ)
夏の風はにほひて吹きぬ街の子が
夕涼みする團扇づかひに
見かはせば何の奇もなく友はあり
あひ別れては胸やぶるまで
[やぶちゃん注:朔太郎満十九歳の時の、前橋中学校校友会雑誌『坂東太郎』第四十三号(明治三八(一九〇五)年十二月発行)に「萩原美棹」の筆名で所収された八首連作の一首、
見代(みかは)せば何(なん)の奇(き)もなく友(とも)はあり相別れては胸(むね)やぶるまで
表記違いの相同歌。]
君を戀ふ眞玉白玉そが中の
ひとつ瓦とはぢらふわれは

