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2014/03/07

芥川龍之介手帳 カテゴリ始動 / 手帳 1-1及び1-2

芥川龍之介の手帳の電子化評釈をカテゴリ始動する。

芥川龍之介のプライベートな秘跡であり、マジカルな作品群の種帖でもあるこれらは、まさに僕にとってのローチェ南壁そのものである。

底本は現在最も信頼の於ける岩波書店一九九八年刊行の「芥川龍之介全集」(所謂、新全集)の第二十三巻を用いつつ、同書店の旧「芥川龍之介全集」の第十二巻を参考にして正字化して示す。取消線は龍之介による抹消を示す。底本の「見開き」改の相当箇所には「*」を配した。適宜、当該箇所の直後に注を附したが、白兵戦の各個撃破型で叙述内容の確かさの自信はない。

再度、言おう。これは多分、僕の中の孤独なローチェ南壁登攀なのである――

……しかし……途中で遭難しない限り……登頂を目指す覚悟では――ある――

 

手帳1

[やぶちゃん注:大正五(一九一六)年の第一銀行横浜支店発行の革製手帳で、現存のそれは(一部に脱落箇所があるらしい)記載可能のページ数は八十七(龍之介によって書き入れられたページは六十七ページ分である。一頁が四日分の記載欄に分かれており、同年の月日曜日が印刷されたものである。【 】で示したものは、底本編者が記載とその日附との強い関連性を認めたものの月日である。なるべく同じような字配となるようにし、表記が難しいものはそのまま画像(特に注のないものは底本の新全集)で示した。各パートごとに《1-1》のように見開き(新全集のそれは物理的な見開きページではなく、少しでも芥川龍之介による記載がある箇所を便宜的に見開きで順列数字を与えたものである)ごとに通し番号を附け、必要に応じて私の注釈を附して、各条の後は一行空けとした。「○」は項目を区別するために旧全集・新全集ともに一貫して編者が附した柱であるが、使い勝手は悪くないのでそのままとした。但し、中には続いている項を誤認しているものもないとは言えないので注意が必要ではある。判読不能字は底本では字数が記されているが、ここでは「■」で当該字数を示した。

 なお、編者によれば、その記載推定時期は大正五(一九一六)年から大正七(一九一八)年頃とある。]

 

二人に30づつ

 

[やぶちゃん注:「30」は底本では半角横組。]


The Sweet-Scented Name

[やぶちゃん注:これは次のソログープの童話の英訳題。“Sweet-Scented”は形容詞で、自然の香りを持つさまを言い、邦題では「よいにおいのする名まえ」「いい香のする名前」などと訳されている(私は未読)。ネット上の質問サイトの答えによれば、『いい香のする名前で呼ばれていた天使が、高慢さゆえ地上に堕とされ、名前も忘れ、マアガレット王女と人間の名前で呼ばれるようになりました。ある国の王子がいい香のする名前を捜してくれて、天使の名前を聞いていた子どもが見つかりました。その病気の子どもの前で王女が踊ると、あらゆる美しい色が見え、あらゆる美しい音が聞こえました。気分が良くなった子どもは、笑った拍子に思い出したいい香のする名前を告げ、王女も天使だった頃の記憶を取り戻します』という梗概があり、『いい香のする名前そのものは、具体的には書かれていません』とある。]

Sologub

[やぶちゃん注:“Sologub”はロシア象徴主義の詩人・小説家フョードル・ソログープ(Фёдор СологубFyodor Sologub 一八六三年~一九二七年)。本名 Фёдор Кузьмич Тетерников(フョードル・クジミチ・テテルニコフ)。ウィキの「フョードル・ソログープ」によれば、『世紀末の文学や哲学に特徴的な、陰気で悲観主義的な要素をロシアの散文に取り入れた最初の作家であり、しばしば死を主要な題材に選んでいる』。『最も有名な小説『小悪魔』は、ロシアで「ポシュロスチ(пошлость = ラテン文字転写でposhlost'として知られる(邪悪さと凡俗さの中間の、野卑な人間像を指す)概念を活写しようとする試みであった。1902年に連載小説として発表され、1907年に定本が出版されると、たちまちベストセラー入りを果たし、作者の存命中に10版を重ねた。内容は、人間性にまるでとりえのない田舎教師ペレドノフの物語である。この作品は、ロシア社会についての辛辣な告発として受け入れられたが、豊かな形而上学小説であり、またロシア象徴主義運動が生んだ主要な散文作品の一つである』。『次なる大作『創造される伝説』(1914年)は、「血の涙」「女王オルトルーダ」「煙と灰」の三部からなる長編小説であり、同じような多くの登場人物が出てくるが、むしろ楽天的で希望に満ちた世界観を示している』。『ソログープは代表作が小説でありながらも、研究者や文学者仲間からは詩人として最も敬意を払われてきた。象徴主義の詩人ヴァレリー・ブリューソフはソログープの詩の簡潔さを称賛して、プーシキン並みに完璧な形式を有していると評した。 他の多くの同時代の作家が新たな文学や、自分たちを代弁する美学的なペルソナを創り出すことを誇った中で、ソログープは(自らたびたび記したように)、仮面の下を瞥見することと――そして内なる真実を探究する機会であると――喝破した』とある。私は中山省三郎訳になる「かくれんぼ 白い母 他二篇」(岩波文庫一九三七年刊)と幾つかの短篇を読んだだけだが、ロシアの作家の中ではとても好きな作家である。]

Russia Librairie

[やぶちゃん注:“Librairie”フランス語で「書店」。こういう書店が当時のフランスにあったかどうかは未確認。]

〇北伊豆町一七

[やぶちゃん注:「北伊豆町」は現存する住所にはないが、現在の丹那トンネルのある静岡県田方郡函南町(かんなみちょう)がそれに相当する地域であるとは思われる。関連のある作家や芥川龍之介の作品は思い浮かばない。]

〇バアテキノシロヲ一ツゴマカシテトリマシタ

[やぶちゃん注:「バアテキノシロ」意味不明。]

【1月 15日】3 Weaknesses in me

                                                          
balancies

 i desire for wordly powers

                              
cowardly

  ii sensuality

iii indolence

Don’t forget these are my death-enemies!

[やぶちゃん注:“Weaknesses”は「優柔不断」か。

“wordly”は「世俗的な」「俗物的」か。

“balancies”は可算名詞であるから、「天秤にかけること」「差引勘定をして残高を確かめること」の謂いか。

“cowardly”は「卑劣な」「卑怯な」であるが、副詞か形容詞であるから、前の“balancies”との並列具合が悪い。“wordly powers”に形容を追加する謂いか。

“sensuality”は官能(肉欲)性又は官能(肉欲)に耽ること・好色の意。

“indolence” は怠惰の意。

“death-enemies”死に至らしめる敵、死を齎す天敵、の謂いか。]

○【1月16日】 弟來る 岸と共に來る 晴日

[やぶちゃん注:「弟」は異母弟新原(にいはら)得二と思われる。「岸」は不詳。]

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