酔漢談義 山之口貘
酔漢談義
ぼくに2号があるとは
それは初耳だと言うと
そうじゃないかよそれで毎晩
帰りがおそいんじゃないかよと言う
飲んで酔っぱらって
おそくなったにすぎないのだが
ないものをあるみたいに探るので
腹が立って来て
損をしているみたいだ
[やぶちゃん注:【2014年月日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。注を改稿した。】初出は昭和三五(一九六〇)年四月号『文藝春秋』。思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」の解題によれば草稿原稿には『1959.12.6』のクレジットがあり、そこでのタイトルは「酔漢談議」となっているとある。]