篠原鳳作句集 昭和九(一九三四)年十二月
稻妻のあをき翼ぞ玻璃打てり
稻妻の巨き翼ぞ嶺(ネ)を打てる
建築現場
鐡骨に夜々の星座の形正し
鐡骨に忘れたやうな月の虧(カケ)
[やぶちゃん注:二句連作。以上四句は総て、十二月発行の『天の川』掲載句。個人的にこの建築場の二句を好む。「鐡骨に忘れたやうな」という部分は推敲の余地があるように(特に中七の直喩が今一つという感じがする)は思われるが、「鐡骨」という近代性と「星座」及び「虧」けた「月」とのシュールレアリスティックな取り合わせ、「鐡骨」という近代の象徴物が悠久の天然自然の「星座」と「月」をかっちりとトリミングする手法が、憎いまでにモダンで洒落ている。]