首をのばして 山之口貘
首をのばして
出版記念会と来ると
首をすくめてそれを見送り
歓送会を来ると
首をすくめてそれを見送り
祝賀会と来ると
首をすくめてそれを見送り
歓迎会とくると
首をすくめてそれを見送り
会あるたんびに
首をすくめては
いろんな会を見送って来た
ある日またかとおもって
首をすくめていると
いいえお顔だけで結構なんです
会費の御心配など
いらないんですと言う
[やぶちゃん注:【2014年6月27日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。初出注を追加した。】初出は昭和三七(一九六二)年六月号『小説新潮』。]