篠原鳳作句集 昭和一〇(一九三五)年二月 除夜風景
除夜風景
氷雨する空へネオンの咲きのぼる
ダンスホール
除夜たぬし警笛とほく更くるとき
[やぶちゃん注:「たぬし」は「楽(たぬ)し」で「楽し」と同義の近世古語。「日本国語大辞典」によれば、万葉仮名で現在、「の」の甲類とされている「怒」「努」などを、近世の万葉の訓詁学で「ぬ」と読んだことから出来た歌語である。]
理髮舖
廻轉椅子くるりくるりと除夜ふくる
年あけぬネオンサインのなきがらに
[やぶちゃん注:以上、四句は二月発行の『天の川』及び三月発行の『俳句研究』に冒頭標記の「除夜風景」の連作として発表されたもの。連作であることから、「除夜風景」は二字下げで一行空け、後の二つの個別前書は三字下げとした。]
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