篠原鳳作句集 昭和八(一九三三)年九月
靑空に飽きて向日葵垂れにけり
向日葵の垂れすうなじは祈るかに
向日葵に海女のゆききの夕さりぬ
泳ぎ子の電車のうなり夕澄みぬ
くり舟の上の逢瀨は月のまへ
パナマ編みは濕氣を要し南洋にては月明
の夜、沖繩にては洞窟にて編む。水の滴
るくらがりにてパナマ編む男女あはれな
り。
木洩れ日の徑をしくればパナマ編み
簪のぬけなんとしてパナマ編み
パナマ編む顏のゆがめる男女かな
筵戸をすこしかゝげてパナマあみ
岩窟にともりゐる灯はパナマあみ
[やぶちゃん注:「灯」は筑摩書房「現代日本文学全集 巻九十一 現代俳句集」でも「灯」。]
まどゐしてみんな胡坐やパナマ編み
丁髷を落さぬ老やパナマ編み
[やぶちゃん注:「パナマ」は先行する昭和五(一九三〇)年三月発表の句「椽先にパナマ編みゐる良夜かな」の私の注を参照されたい。]
獨居
干ふどしへんぽんとして午睡かな
[やぶちゃん注:以上、十三句は九月の発表及び創作パートに配されてある。]

