若しも女を摑んだら 山之口貘
若しも女を摑んだら
若しも女を摑んだら
丸ビルの屋上や煙突のてつぺんのやうな高い位置によぢのぼつて
大聲を張りあげたいのである
つかんだ
つかんだ
つかんだあ と張りあげたいのである
摑んだ女がくたばるまで打ち振つて
街の橫づらめがけて投げつけたいのである
僕にも女が摑めるのであるといふ
たつたそれだけの
人並のことではあるのだが。
[やぶちゃん注:【2014年6月25日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証し、注の「定本 山之口貘詩集」版の再現の改行の一部に誤りがあったことが判明したため、一部を訂正した。】初出未詳。
バクさんの詩の中でも人気の一篇である。原書房刊「定本 山之口貘詩集」では、
若しも女を摑んだら
若しも女を摑んだら
丸ビルの屋上や煙突のてつぺんのやうな高い位置によぢのぼつて
大聲を張りあげたいのである
つかんだ
つかんだ
つかんだあ と張りあげたいのである
摑んだ女がくたばるまで打ち振つて
街の橫づらめがけて投げつけたいのである
僕にも女が摑めるのであるといふ
たつたそれだけの
人並のことではあるのだが。
と連構成が大きく変更されている。無論、四行目の「つかんだ」が初読時に叫び声として読者に響かない虞れがあるので、改稿の方が遙かによい。
【二〇二四年十一月二日追記・改稿】国立国会図書館デジタルコレクションの山之口貘「詩集 思辨の苑」(昭一三(一九三八)年八月一日むらさき出版部刊・初版)を用いて(当該部はここ)、正規表現に訂正した。]