杉田久女句集 88 新涼
障子しめて灯す湯殿や秋涼し
新涼や紫苑をしのぐ草の丈
[やぶちゃん注:「紫苑」キク目キク科キク亜科シオン連シオン
Aster tataricus。別名はオニノシコグサ(鬼の醜草)・ジュウゴヤソウ(十五夜草)。参照したウィキの「シオン(植物)」によれば、草丈は一八〇センチメートル程までになり、『開花期は秋で、薄紫で一重の花を咲かせる』。本邦では園芸種として『花を観賞するためによく栽培されている』が、『九州の山間部に、少数であるが自生している』ともあり、また、『その花の色から紫苑という色名の語源となった。花言葉は「君の事を忘れない」・「遠方にある人を思う」』であるとする。]
新涼や日當りながら竹の雨
新涼の雨吸ひ足りて砂畠
新涼やほの明るみし柿の數
新涼や濡れ髮ほのと束ねぐせ
新涼や障子はめある化粧部屋
秋涼し朝刊をよむ蚊帳裾濃(すそご)
[やぶちゃん注:「裾濃」染めや織りの技法の一つ。同系色で、上方を淡くし、下方に向うに従って次第に濃くしてゆくもの。]