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« 篠原鳳作句集 昭和八(一九三三)年十一月 | トップページ | 喪のある景色   山之口貘 / 山之口貘詩集 新作分十二篇電子化開始 »

2014/03/15

ものもらひの話   山之口貘  / 詩集「思弁の花」 後記 詩集「思弁の花」(金子光晴の序文を除く)全電子化終了

 

   ものもらひの話

 

家々の

家々の戶口をのぞいて步くたびごとに

ものもらひよ

街には澤山の恩人が增えました。

 

恩人ばかりを振ら提げて

交通妨害になりました。

狹い街には住めなくなりました。

 

ある日

港の空の

出帆旗をながめ

ためいきついてものもらひが言ひました

俺は

怠惰者(なまけもん) と言ひました。 

 

[やぶちゃん注:【2014年6月25日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証した際、ミス・タイプ(最後の句点の脱落)を発見、本文を訂正、さらに注を改稿した。】初出は昭和四(一九二九)年九月『爬竜船』とするが、詳細書誌は不詳(「爬竜船」(はりゅうせん)は沖縄のハーリーで用いられる船のことで琉球方言では「はーりーぶに」と読む)。次の「後記」で知れるように、本詩集の中で、製作年代が最も古いバクさんの詩である。初出発表月でバクさんは満二十六歳であった。

 「定本 山之口貘詩集」では四箇所の句点総てが除去され、第二連一行目が、「恩人ばかりをぶら提げて」と改められてある。

 この詩については、バクさんの「ぼくの半生記」(一九五八年十一月から十二月にかけての『沖繩タイムス』への二十回連載)の中で言及がある。かの呉勢(ぐじー)との関係が完全に解消(そこでは実は彼女はバクさんとの婚約を一方的に解消したのだが、その後一度復縁を迫ったことがあったが最早断ったとある)後のこと、呉勢を知る以前の小学生時代に好きだった年下の「M子」に恋い焦がれたのだが、結局、『大正十三年の秋』、この『M子のことを断念して、二度目の上京をしたが、そのときの詩に「ものもらひの話」がある』と記す。失恋のためというのではないにしても、失恋の失意がスプリング・ボードとなっての沖繩出郷であったことが、この詩と文章から強く窺われる。]  

 

     後  記 

 

 ここにをさめた作品は、一九二三年以後のもの五十九篇である。

 作品の配列を、卷尾の方から卷頭へと製作順にして置いた。

 これらの作品は、殆ど、發表したものであるが、詩集を出すに當つて、近作の中には手を加へたのもある。又、ずつと後になつてから、發表するために手をいれた舊作などあつたが、それらのものはみんな、再び舊態のまんまをここに採用した。 

 

  ○

 

 佐藤春夫氏の玉稿は、五年も前に頂戴してあつた。

 金子光晴氏の玉稿もまた、三年前に頂戴してあつた。但し、氏の題目は別に本日いたゞいて來た。

 兩氏、並びに、すゝんでこの書出版の勞をとつて下すつた小笹氏とに深く感謝する次第である。 

 

  ○ 

 

 表紙の唐獅子は兄の作。

          一九三八年六月十九日 夜 

               山 之 口  貘

 

[やぶちゃん注:「兄」十歳違いの長兄重慶であろう(当時のバクさんは三十五歳)。底本全集年譜によれば、『洋画家として既に沖縄画壇に重きをなしていた』と大正六(一九一七)年の八月に十四歳のバクさんが沖繩の美術集団「丹青美術協会」の会員となった記載に載る。重慶は同協会の幹事であり、バクさんはその手助けをしたともある。あまり知られているとは思えないが、バクさんは若き日は画家を志していた。なお、この兄重慶は敗戦から三か月後の昭和二〇(一九四五)年十一月、栄養失調で亡くなっている。以上で山之口貘詩集「思弁の苑」は終わっている。佐藤春夫と金子光晴の著作権は未だ存続中であるので電子化はしない。但し、佐藤春夫は著作権の消滅する来年一月一日以降に電子化する予定ではある。【2014年6月25日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。】

【二〇二四年十月二十八日追記・改稿】国立国会図書館デジタルコレクションの山之口貘「詩集 思辨の苑」(昭一三(一九三八)年八月一日むらさき出版部刊・初版)を用いて(当該部はここから)、正規表現に訂正した。現在、進行中だが、先日、佐藤春夫の序文を電子化した関係上、この最後を、少し早めに訂正したものである。原本の奥附はここ。【二〇一四年十一月二日追記】上記原本に拠る正字表現修正を終了した。但し、驚くべきことに、国立国会図書館デジタルコレクションの初版本は、多量の落丁があることが作業中に判明した。それは「無題」右の「九八」ページで終って、その左丁が、突然、「一一五」ページとなって、「雨と床屋」の最終部分の四行だけが載っているのである。本書內の十六ページ分が、ごっそり脱落しているのである。これは、実に「夜景」・「生活の柄」・「論旨」・「大儀」・「鏡」・「喰人種」・「自己紹介」・「立ち往生」の八篇分が全く載らず、前に述べたように、「雨と床屋」の八行からなる詩篇の前半四行が載っていないのである。しかも、本国立国会図書館デジタルコレクションの底本詩集のどこを探しても、この呆れ果てた落丁についての修正や差し込みなどは――ない――のである。バクさん、最終製本の校正をしなかったのか? それとも、国立国会図書館に献本する際に、間違って、校正前の不良落丁本を提出してしまったものか? この驚くべき事態は、思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」の解題にも記されていないのである。国立国会図書館デジタルコレクションでは、同詩集は一冊しか、ない。途方に暮れた。しかし、★――一つの光明はあった――★のである。本詩集発行から二年後、バクさんは、この「思辨の苑」の全詩篇五十九篇と、同詩集刊行後に創作した詩十二篇を追加して第二詩集「山之口貘詩集」(昭和一五(一九四〇)年十二月山雅房刊)を出しており、その原本が国立国会図書館デジタルコレクションのここ(左のリンクは標題ページ。奥附はここ)にあるから、である。仕方がないから、これで、正規表現を、落丁の八篇と一篇の前半部について校訂することとする。但し、この「山之口貘詩集」の九篇が「思辨の苑」と全く同じである確証はない。バクさんは、詩一篇を完成させるのにも、驚くべき多数の改稿をするからである。また、初出は勿論、先行する詩集からの再録するに際しても、頻繁に改作を行うからである。これは、しかし、私が四苦八苦してやるよりも、所持する思潮社一九七五年七月刊「山之口貘全集 第一巻 詩集」と、上記の「新編」版で、校異されているものと、勝手に抱っこにオンブで、信頼することとする(実は、これは、実は、殆んど信頼出来るものではない。何故かって? 一九七五年七月刊の全集の「詩集校異」の冒頭『思弁の苑』のパートには、『誤字、誤植を訂正し、句読点とくりかえし符号をとりのぞき、若干の行かえと表記の訂正もほどこされている。そのうち』(☞)『おもなものを』(☜)『列記しておく』とやらかしてあるからである。一方、最大の頼みの綱である「新編」版は、第一巻が出たっきり、もう十一年になるのに、残りの二巻以降は未だに出版されていないのだ。しかも、校異は、最後の第四巻に付されることになっているんだ! おいッツ! 俺が生きている間に、全巻! 出せよ! そうしないと、キジムナーに化けて、呪い殺すぞッツ!

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