篠原鳳作句集 昭和八(一九三三)年三月
ストーブや國みなちがふ受驗生
漂泊の露人とクリスマスをいとなむ
ガチヤガチヤの鳴く夜を以てクリスマス
[やぶちゃん注:「ガチヤガチヤ」ここでは十二月に鳴いているのが当たり前の感じからして宮古か沖繩本当の景と考えられ、とすれば直翅(バッタ)目剣弁(キリギリス)亜目キリギリス科
Mecopoda 属タイワンクツワムシ Mecopoda elongata と思われる。ウィキの「タイワンクツワムシ」によれば、同じ
Mecopoda 属のクツワムシ Mecopoda nipponensis に『似ているが、羽根は細長く、前胸の側面に黒褐色の帯が上面に沿って現れる。別名ハネナガクツワムシ』ともいい、『伊豆半島以南の本州、四国、九州、沖縄などの他離島に分布』する(通常、我々が「ガチャガチャ」と呼ぶクツワムシ
Mecopoda nipponensis は南西諸島には分布しない模様である)。体長は六・五~七・五センチメートルで、『メスはオスよりも大きい。体は緑かまたは褐色。オスの前胸はクツワムシより広がり方が弱い。発音器もやや小さい。また本種は脚や触角の体に対する割合が大きく、羽は丸みが少なく細長く、背面側の先端近くが緩やかに上にカーブし、凹んだように見える。個体によっては羽の側面に現れる黒斑もクツワムシより多く、大きい。特にメスで顕著。またメスの方が羽根が長くなることが多くこうした個体は灯りに向かって飛翔してくることさえある。産卵管は後脚腿節の半分ほどの長さで上に向かいカーブする。鳴き声も全く異なっており、「ギィッ!ギィッ!」と前奏を数回繰り返した後、本奏は「ギュルル…」と長く引き延ばす鳴き方をし、この部分はクツワムシの声に似たところもある』とする。『南方系種で海岸や線路沿い、土手などクツワムシよりも乾燥した、日当たりの良い環境を好み、普通は混生しない。本種とクツワムシとが生息している地域では平地に本種が、クツワムシは山地に住む傾向がある』。『夜行性であり、日が暮れてから活動する。昼間クツワムシは根元近くで休むのに対し、本種は葉の上で脚を広げ、じっとしていることが多い。食草はクツワムシ同様、クズが主食であり、その他乾燥草原に生える各種広葉雑草から低木の葉までを食べる。飼育下ではクツワムシと全く同じ物を食べ、多少の肉食もするが共食いは殆どしない』。『クツワムシより褐色個体の割合が高く、緑色型として羽化し外骨格の硬化が完了した個体であっても、日照量の少ない日陰や夜間での活動を続けると1ヵ月程度で褐色に変化してしまう。
本州のものは6月頃孵化し8月頃羽化、初霜の頃には死に絶えるというクツワムシと同様の一生を送るが、南に行くほど成虫の生存割合は高まり、亜熱帯地域では冬を越して幼虫が孵化する頃まで生きていることも珍しくない』とある(下線やぶちゃん)。]
手づくりの蠟燭たてやクリスマス
[やぶちゃん注:「蠟燭」は底本の用字。]
聖誕祭かたゐは門にうづくまる
[やぶちゃん注:ここまでの四句は三月の発表句。]