春愁 山之口貘
春 愁
小母さん
小母さんの小父さんは得なんですよ
朝は
小父さんのやうに僕も寢不足の眼をしてみたいんです
小父さんが小母さんにするやうなことをしてみたいんです
蛾のやうに
鈍重なはゞたきの音をたてゝみたいんです
小父さんの
小母さんよ
小母さんの
小父さんはなんといつてもそれは得なんですよ
[やぶちゃん注:【2014年6月25日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。この注を追加した。】初出は昭和一〇(一九三五)年五月倍大号『羅曼』に総標題「動物園」で後に出る「動物園」と本詩と前の「座談」の三篇が掲載された。
【二〇二四年十一月二日追記・改稿】国立国会図書館デジタルコレクションの山之口貘「詩集 思辨の苑」(昭一三(一九三八)年八月一日むらさき出版部刊・初版)を用いて(当該部はここ)、正規表現に訂正した。]

