篠原鳳作句集 昭和九(一九三四)年三月
時計臺
冬木空時計のかほの白堊あり
おでん喰ふそのかんばせの鋭(と)きゆるき
おでん食ふよ轟くガード頭の上に
おでん食ふよヘッドライトを横浴びに
[やぶちゃん注:「ヘッドライト」の拗音はママ。これ以前の句には認められない大きな変化である。]
冬木空大きくきざむ時計あり
大空の風を裂きゐる冬木あり
時計臺
冬木空するどく聳てる時計あり
冬木あり自動車ひねもす馳せちがふ
[やぶちゃん注:以上、八句は三月の発表句。]