萩原朔太郎「ソライロノハナ」より「若きウエルテルの煩ひ」(11)「はなあやめ」(Ⅰ)
はなあやめ
共ずみの好み君にして
六月植えぬろべりやの花
[やぶちゃん注:「植え」はママ。「ろべりや」は再注すると、キキョウ目キキョウ科ミゾカクシ(溝隠)属
Lobeliaのロベリア・エリヌス
Lobelia erinus、和名ルリチョウソウ(瑠璃蝶草)及びその園芸品種をいう。南アフリカ原産の秋播きの一年草で、高さ二十センチメートルほどでマウンド状に広がる。四月から七月頃に青紫色の美しい花を咲かせ、花色は赤紫色やピンク・白色などがある。(weblio辞書の「植物図鑑」にある「ロベリア・エリヌス(瑠璃蝶草)」に拠った。画像はグーグル画像検索「Lobelia
erinus」も参照されたい)。
朔太郎満十九歳の時の、前橋中学校校友会雑誌『坂東太郎』第四十三号(明治三八(一九〇五)年十二月発行)に「萩原美棹」の筆名で掲載された七首連作の巻頭歌、
共住(ともづみ)の好(このみ)少なき君にして六月植(う)ゑぬろべりやの花
の表記違いの相同歌。]
かきつばたいと美しき人妻は
朝靄いでゝ人思ふさま
春の夜やとある小路におどろきぬ
巨人のやうに見えし水甕(みがめ)に
[やぶちゃん注:前の一首と同じ雑誌に「ろべりや」歌群の後に載る八首連作の第六首目の、
春(はる)の夜(よ)やとある小路(こじ)に驚(おどろ)きぬ巨人(きよにん)のように見えし水甕(みがめ)に
の表記違いの相同歌。]