元旦の風景 山之口貘
元旦の風景
正月三ヵ日はどこでも
朝はお雑煮を
いただくもので
仕来たりなんじゃありませんか
女房はそう言いながら
雑煮とやらの
仕来たりをたべているのだ
ぼくはだまって
味噌汁のおかわりをしたのだが
正月も仕来たりもないので
味噌汁ぬきの朝なんぞ
食ったみたいな
感じがしないのだ
[やぶちゃん注:【2014年6月27日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。初出注を追加した。】初出は昭和三七(一九六二)年一月号『全繊新聞』。]