橋本多佳子句集「信濃」 信濃抄一 (Ⅱ) 父三十三囘忌 想出は花火の空をふりかぶる
父三十三囘忌
想出は花火の空をふりかぶる
[やぶちゃん注:橋本多佳子・本名・山谷多満は明治三二(一八九九)年一月十五日、東京市本郷区龍岡町八番地で山谷雄司・津留夫妻の子として生まれた。底本年譜によれば、『祖父の山谷清風は、山田流筝曲の家元で、検校。旗本屋敷に出入りし、黒田家に琴を教える。御維新で没落し、まもなく死亡。祖母は女手で三人の娘を育てる。その長女が津留である。津留に家を継がすため養子・雄司を迎える。雄司は役人』であったが、多佳子十歳の明治四二(一九〇九)年七月四日に父雄司は逝去している。年譜上の父の記載はこれだけである(因みに多佳子は大正三(一九一四)年十五歳の時に故祖父山谷清風の後継として琴の「奥許」を受けている。師は中田光勢・萩岡松韻)。]