橋本多佳子句集「信濃」 昭和十九年 Ⅲ
夫の墓地阿倍野にあり
事告げて歸へる萩むら風の中
[やぶちゃん注:「阿倍野」現在の大阪市阿倍野区。実はこの昭和一九(一九四四)年五月に多佳子一家は大阪の帝塚山(帝塚山は現在の大阪市阿倍野区南西部から同市住吉区北西部にかけての地域名である)から奈良市あやめ池町南四丁目に疎開している(年譜に拠る)。「事」の内容は無論分からないが、前に次女国子の、婚約者堀内三郎との別れに際しての二句を受けるなら、その哀しい報告が「事」の一つであったことは間違いないと思われる。]

