篠原鳳作初期作品(昭和五(一九三〇)年~昭和六(一九三一)年) Ⅶ
拾ひたる秋の燕の幼けき
拾ひたる秋の燕のぬくみ哉
浦人に颱風(アラシ)の燕ひろはれぬ
日覆の中をあちこち散歩哉
そのかみの日時計臺や花杏子
[やぶちゃん注:単なる直感に過ぎないが、これは現在、鹿児島の繁華街として知られる天文館の由来となった薩摩藩第二十五代藩主島津重豪が天体観測や暦の研究施設として建設された明時館(天文館は別名)にあった、薩摩藩だけが独自に編暦していた薩摩暦による日時計の台跡ではあるまいか(但し、明時館は明治の初期には廃亡していたという)。]
雲の峰たちて大わだ凪ぎにけり
颱風に戸をうばはれし二階かな