坐像 山之口貘
坐像
かれはどこかの
高いところから
すべり落ちて来た物みたいに
いつでもそこの
ガード下にいるのだ
ぺたんと坐って
こごんではいても
神など拝んでいるのではないのだ
かれはどっしりとそこのところにいて
静かに息づきながら
自らの座を
地球の上に占め
その身をぼろにくるんで
虱など持参で生きているのだが
人間を信じて
生きているのだ
[やぶちゃん注:【2014年7月7日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。初出注を追加した。】初出は昭和二八(一九五三)年二月発行の『農村』。]