飯田蛇笏 靈芝 昭和八年(四十四句) Ⅱ
新參の眼鼻立ちよくはんべりぬ
[やぶちゃん注:これは前句の猫の連作であろう。]
梅園や雲ゆく月の十日ごろ
古驛吉田宿にて
裏富士や梅盛りなる御師(おし)の宿
[やぶちゃん注:「古驛吉田宿」は富士山北の登り口に当たる山梨県の旧南都留郡、現在の富士吉田市中心部にある上吉田町と思われる。サイト「富士山の信仰 北口登山」の「御師」によれば、『御師は富士山の神霊と崇拝者の間にたち、崇拝者に代わって祈りをあげ、お札を配り、登拝(信仰登山)の際には自宅を宿泊所として提供して、富士信仰を広める役割を果たした人々で』、『室町末期には御師の存在が記録の上で確認されており、その頃すでに御師か盛んに活動していたことがわかり』、江戸の最盛期には約百『軒ほどの御師が上吉田に居住してい』たとある。]
青森埠頭
黝汐にのりて春趁ふ鷗かな
弘前公園にて
嵐ふく古城の花に津輕富士

