杉田久女句集 181 長女チブス入院 十二句
長女チブス入院 十二句
童話よみ盡して金魚子に吊りぬ
親ごころ
梶の葉に墨濃くすりて願ふこと
[やぶちゃん注:「梶の葉」「かぢのは(かじのは)」はイラクサ目クワ科コウゾ属カジノキBroussonetia papyrifera の葉。神道では神に捧げる神木として尊ばれ、主として神事の供物の敷物に使われた。また昔は七夕の祭りでは短冊ではなく、この葉七枚に歌などを認めて手向ける風習があった。]
七夕百句靑き紙にぞ書き初むる
子等は寢し簷端の月に涼みけり
七夕竹を病む子の室に横たへぬ
水上げぬ紫陽花忌むや看る子に
退院
面瘦せし子に新しき單衣かな
昌子快復
七夕や布團に凭れ紙縒る子
庭木のぼる蛇見てさわぐ病兒かな
銀河濃し救ひ得たりし子の命
床に起きて繪かく子となり蟬涼し
全快
初秋の土ふむ靴のうす埃
[やぶちゃん注:大正七(一九一八)年二十八の時の句。長女昌子数え八歳であった。]

