飯田蛇笏 靈芝 昭和八年(四十四句) Ⅰ
昭和八年(四十四句)
松過ぎや街はるばると葬車驅る
[やぶちゃん注:「はるばる」の後半は底本では踊り字「〲」。]
大餝り花街は月の幽らけれど
[やぶちゃん注:「幽らけれど」は「くらけれど」と訓じていよう。]
深山空寒明けし陽のわたりけり
お彼岸の鐘きゝとむる樵夫かな
まなじりに點ずる臙脂や暮の春
野祠やかげろふ上る二三尺
墓山のかげろふ中に詣でけり
眞澄みなる苗田の水に鎌研げる
とぢまけて春眠の眼の疲れけり
われを視る眼の水色に今年猫
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