篠原鳳作句集 昭和一〇(一九三五)年九月
寂光土
わたの日を率てめぐりゐる花一つ
わだの日を率てめぐりゐる花一つ
向日葵の黄に堪へがたく雞つるむ
向日葵の黄に堪えがたく鷄つるむ
草灼くるにほひみだして雞つるむ
草灼くる匂みだして鷄つるむ
いちぢくの實にぞのぞかれ雞つるむ
いちぢくの實にぞのぞかれ鷄つるむ
和田津海の邊に向日葵の黄を沸かし
わだつみの邊に向日葵の黄ぞ沸かし
[やぶちゃん注:以上十句は九月の発表句で、それぞれ、前者が同月発行の『天の川』、後者が同月発行の『傘火』の、「寂光土」連作である。なお、底本の鳳作年譜の昭和十年の八月の項に、『京阪神に遊び、神戸の榎島沙丘宅に一泊、「旗艦」同人らの歓迎句会が開かれ喜多青子らと快談、「鶏つるむ」の連作五句を出句した』とある。]
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