橋本多佳子句集「信濃」 昭和二十年 Ⅷ
舊より江夫人邸
秋蝶に猫美しく老いにけり
[やぶちゃん注:「より江」既にこの四年前に逝去していた先輩の女流俳人久保より江(明治一七(一八八四)年~昭和一六(一九四一)年)。旧姓宮本。愛媛県松山生まれで夏目漱石や正岡子規に接して句作を始め、上京、東京府立第三高等女学校(現在の都立駒場高等学校)を卒業、日本耳鼻咽喉科学の先駆者久保猪之吉(いのきち)と結婚、夫が福岡医科大学教授となって福岡に住むと、夫とともに俳句は高浜虚子に、短歌は服部躬治(もとはる:私のブログ記事「鞦韆のさゆらぎ止まぬ我が庭の芭蕉卷葉に細し春雨 萩原朔太郎」の注を参照)に師事、柳原白蓮・竹下しづの女・杉田久女らと交友、当時は福岡で「久保サロン」と呼ばれた。多佳子も寄稿している『花衣』(昭和七(一九三二)年に久女により創刊された俳誌)にも寄稿しており、年譜には特に名は出ないが、福岡の同じ文化的セレブでもあり、多佳子も親しくしていたものと思われる。]
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