杉田久女句集 200 病める母子
東京へ歸りて
蟲鳴くや三とこに別れ病む親子
[やぶちゃん注:「三とこ」富士見書房平成一五(二〇〇三)年刊の坂本宮尾「杉田久女」に、この頃、『小倉の宇内も痔で入院し、長女は宇内の郷里の小原村に、次女は久女の実家に預けられていた』という事実を指す。]
西日して日毎赤らむ柿の數
頓に色づく柿數へつゝ病む久し
こほろぎや鼾靜かに看護人
葉を打つてしぼみ落ちたる芙蓉かな
おいらん草こぼれ溜りし殘暑かな
松名にある昌子をおもふ
鬼灯や父母へだて病む山家の娘
[やぶちゃん注:「松名」夫杉山宇内の実家愛知県西加茂郡小原村松名(現在は豊田市に編入)。]
山馴れで母戀しきか三日月