杉田久女句集 194 淺間温泉枇杷の湯
病中吟
淺間温泉枇杷の湯
衰へて今蠶飼ふ温泉宿かな
簾捲かせて銀河見てゐる病婦かな
屋根石に四山濃くすむ蜻蛉かな
今朝秋の湯けむり流れ大鏡
林檎畠に夕峰の濃ゆき板屋かな
八月の雨に蕎麥咲く高地かな
行水の提灯(ひ)の輪うつれる柿葉うら
行水や肌に粟立つ黍の風
[やぶちゃん注:「淺間温泉枇杷の湯」浅間温泉で現在「湯々庵
枇杷の湯」として営業している。公式サイトはこちらで、その「歴史」によれば、『信州・松本の奥座敷、浅間温泉に佇む伝統の湯。「湯々庵 枇杷の湯」の歴史は、今を遡ること400年の昔、初代松本城主
石川氏が浅間に湯御殿を造営し、湯殿を整備したことから始まり』、『初代の湯守である当館の先祖「石川晶光(改易後 小口楽斎)」は、石川数正公の三男康次の子であり、戦で負傷し歩行困難の身となったことで御殿守の役職をあずかるに至り』(文禄三(一五九四)年)、『以後、小口家は代々御殿湯の湯守を勤め、松本藩の最藩政資料となる「信府統記」にも、「湯守小口治庵と云う者代々之を務む」とあ』るとある由緒ある温泉である。]
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