湯気 山之口貘
湯気
白いのらしいが
いつのまに
こんなところにまでまぎれ込んで来たのやら
股間をのぞいてふとおもったのだ
洗い終ってもう一度のぞいてみると
ひそんでいるのは正に
白いちぢれ毛なんだ
ぼくは知らぬふりをして
おもむろにまた
湯にひたり
首だけをのこして
めをつむった
[やぶちゃん注:【2014年7月22日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。注を追加した。】初出は昭和二三(一九四八)年八月号『芸術』。掲載誌の標題は「湯氣」。前掲「きゃべつ」注参照のこと。清書原稿を本篇では底本とする思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」では、三行目「こんなところにまでまぎれ込んで来たのやら」が、
こんなところにまで
まぎれ込んで来たのやら
と改行されて二行になっている。
*
湯氣
白いのらしいが
いつのまに
こんなところにまでまぎれ込んで來たのやら
股間をのぞいてふとおもつたのだ
洗い終つてもう一度のぞいてみると
ひそんでいるのは正に
白いちぢれ毛なんだ
ぼくは知らぬふりをして
おもむろにまた
湯にひたり
首だけをのこして
めをつむつた
*]