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2014/04/05

鹿と借金   山之口貘

 鹿と借金

 

山の手のでぱあとの一角に

珈琲の店を経営しているとかで

うまい珈琲を

ごちそうしたいと彼は言った

岬の方には釣舟をもっているとかで

釣へも案内したいと彼は言った

なかでも自慢なのは鉄砲とかで

いずれそのうちに

鹿を射止め

鹿の料理をごちそうしたいとかれは言った

ぼくはかれに逢うたんびに

いまにもそこに出て来そうな

鹿だの釣だの珈琲だのをたのしみにして

かれの顔をのぞいては

まだかとおもったりしないではいられなかった

ところがどうにも仕方のないことがあって

ぼくはついにかれに

金を借りてしまったのだ

そのかわりみたいにそれっきり

ごちそうの話がひっこんでしまって

金の催促ばかりが出てくるのだ



[やぶちゃん注:【2014年7月7日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。初出注を追加した。】初出は昭和二九(一九五四)年二月増大号『小説新潮』。]

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