杉田久女句集 191 精進落しの景
忌に寄りし身より皆知らず洗ひ鯉
爐のほとりに集りて雜話や靑なんば燒く
[やぶちゃん注:「靑なんば」青南蛮。青唐辛子のこと。]
新蕎麥を打つてもてなす髮鄙び
掘つて來し大俎板の新牛蒡
精進おちの生鯉料理る筧かな
芋汁や紙すゝけたる大障子
三軒の孫の喧嘩や靑林檎
鬼灯やきゝ分さときひよわの子
[やぶちゃん注:ここまで、父納骨式後の精進落しの嘱目吟ととる。平凡社「世界大百科事典」の「精進落し」の項には、仏教関係行事が終わって再び日常生活に帰る際に行われる行事で、肉食を精進落しの象徴としている地域が多いとあり、まさに『長野県上伊那郡では葬式から帰った人々が仏前に膳を並べ鯉の吸物などを食べることを精進落しという』とある。]
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