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2014/04/16

またはじまった 山之口貘

 またはじまった

 

かれらはぼくのぐるりを

はなはだうるさく飛び廻った

ぼくは腹立ちまぎれに

ペンをそこにおいては

かれらのことを一々

掌でもってたたきつぶし

あるいは縁のうえにたたきのめした

かれらは蚊であったり

足ながであったり蛾であったり

こがね虫または兜虫であったりした

ある夜

一匹の兜虫が

電気すたんどの笠にすがりついた

ぼくはペンをおいて

兜虫のその首を摑み

そのまま持って縁側に飛び出した

するとよけいな口をきくもので

またはじまったと女房が言った

 

[やぶちゃん注:【2014年月日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。本篇は僕の手違いで公開を落としていたため、急遽、ここに挿入したことをお断りしておく。】初出は昭和二四(一九四九)年十一月号『改造文藝』。

「足なが」双翅(ハエ)目糸角(カ)亜目ガガンボ下目ガガンボ上科ガガンボ科 Tipulidae のガガンボ類のこと(ガガンボという和名は江戸時代に命名されたもので「蚊の母」に由来する)。アシナガトンボと呼ぶ地域もある。

 この詩、凡百の色気に充ちた自称詩人なら「こがね虫」の後に「兜虫」は出さずに、後半の景に抒情味を添えてしまうであろうなどと思ったりした。]

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