杉田久女句集 183 大正七年實父逝く 四句
大正七年實父逝く 四句
父逝くや明星霜の松になほ
湯婆みなはずし奉り北枕
椀一つ足らずと探す寒さかな
み佛に母に別るゝ時雨かな
[やぶちゃん注:杉田久女(本名久)の父廉蔵は大正七(一九一八)年十二月七日に脳溢血のために東京の実家で亡くなった。昌子さんの年譜によれば、この上京の時、『連絡船に乗り遅れ』、『関門海峡を急行に間に合』わあせるために漁船『を傭い途中ポンポン蒸気に曳航してもらって間に合った。後年、若かったから出来た無鉄砲だと言った』という息女ならでは書けぬエピソードを記しておられる。久女らしい、いい話である。]