篠原鳳作句集 昭和一〇(一九三五)年十一月
一掬のこの月光の石となれ
瞑れば我が黑髮も月光(つき)となる
「考ふる葦」のうつしみ月光にあり
(注) 「人間ハ考ヘル葦デアル」パスカル
天に噴くもの
噴煙の吹きもたふれず鷹澄める
噴煙のいざよふ如き日のあはれ
噴煙を知らねば海豚群れ遊ぶ
噴煙の夜はあかければ鳴く千鳥
行く秋の噴煙そらにほしいまま
[やぶちゃん注:この句、一読、杉田久女の昭和六(一九三一)年の名句、
谺して山ほととぎすほしいまゝ
を想起するが、久女のような深いパースペクティヴがなく、ワイドな画面乍ら、絵葉書のような平板さを免れていない。
ここまでの八句、十一月に発表句及び創作句と考えられるもの。]