東の家 山之口貘
東の家
時計を買っては
時計を買ったと
ラジオを買っては
ラジオを買ったと
長屋を建てては
長屋を建てたと
たのみもしないのにそんなことばかりを
いちいち報告に来るのだが
お米で買ったお米で建てたと
つまりはそれが自慢なのだ
東の家ではその日もまた
お米で仕入れて来たものなのか
島田に結ったひとり娘が
牛馬にゆられながら
花嫁さんを仕入れて来た
[やぶちゃん注:【2014年7月22日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。注を追加した。】初出は昭和二三(一九四八)年七月号『改造』。掲載誌の標題は「農村風景 東の家」。この詩については「東の家と西の家」及び「鮪に鰯」で先行する「西の家」の注を参照のこと。]
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