飯田蛇笏 靈芝 昭和九年(百七句) Ⅺ
背負ひたつ大草籠や秋の晝
土を見て歩める秋のはじめかな
新凉の乳ふくむ兒と草刈女
新凉の土のあらはに黍穗垂る
煙なき甲斐國原の秋日かな
三日月に餘り乳すてる花卉のもと
山中斃馬捨場
高西風に斃馬を落すこだまかな
[やぶちゃん注:「高西風」で「たかにし」と読み、関西地方以西で、十月頃に上空を急に強く吹く西風のことをいう。秋の季語。シチュエーションといいSEといい「たかにし」の風の荒んだ体感といい、蛇笏真骨頂の鬼趣の句である。]
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