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2014/04/19

大和本草卷之十四 水蟲 蟲之上 孑孑蟲

【外】

孑孑蟲 汚濁ノ水中ニ生ス水中ニ動キテ恰棒ヲフル勢

ノ如シ大小二種アリ皆蚊トナル大ナルハ豹トナル

〇やぶちゃんの書き下し文

【外】

孑孑蟲(ばうふりむし) 汚濁の水中に生ず。水中に動きて恰かも棒をふる勢ひのごとし。大小二種あり、皆、蚊となる。大なるは豹(やぶが)となる。

[やぶちゃん注:双翅(ハエ)目長角(糸角/カ)亜目カ下目カ上科カ科 Culicidae の幼虫。ウィキの「カ」の「生活環」によれば、蚊は『一生のうちで、卵→幼虫→蛹→成虫と完全変態する。卵から蛹までの期間は種や温度によって変わる。イエカの一種 Culex tarsalis は、20℃の環境では14日で生活環を完成させる。25℃の環境では10日で』、『卵はヤブカ類では水際に、オオカ類やハマダラカ類では水面にばらばらに産み付けるがイエカ類では水面に卵舟と呼ばれるボート状の卵塊を浮かべ、数日のうちに孵化する。なお、産み付けられた卵や幼虫は産卵誘因フェロモンを放出しており、卵や幼虫がいる水ほど他の蚊が産卵しやすい。特定の細菌も蚊の産卵誘因物質を産生している』。『幼虫は全身を使って棒を振るような泳ぎをすることからボウフラ(孑孒、『広辞苑』によれば孑孑でもよい)』、『地方によってはボウフリとよばれる。ボウフラは定期的に水面に浮上して空気呼吸をしつつ、水中や水底で摂食活動を行う。呼吸管の近くにある鰓は呼吸のためではなく、塩分の調節に使われると考えられている。生息場所としては、主に流れのない汚れた沼や池などに生息するが、ハマダラカの一部などで知られるようにきれいな水を好むものや、それ以外にも水たまりや水の入った容器の中など、わずかな水場でも生息するものがいる。トウゴウヤブカにみられるように、海水が混じるため海浜部にある岩礁の窪みの、しばしば高い塩分濃度になる水たまりにも生息するものも知られる。ボウフラは環境の変化には弱く、水質が変化したり、水がなくなったりすると死滅しやすい。水に川のような流れがあると生活できないものがいる一方、渓流のよどみを主な生活場所とするものもいる。特殊な環境で成長する種類もおり、樹木に着生したアナナス類の葉の間にたまった水、食虫植物のサラセニアの捕虫器内の水、波打際のカニの巣穴内などで成長する種類もいる。ボウフラは空気を呼吸するのに尾端にある吸管を使用するが、ハマダラカ類では呼吸管がないため、体を水面に平行に浮かべて、背面の気門を直接水面に接して呼吸する。幼虫のほとんどは水中のデトリタスや細菌類などを食べ、ハマダラカ類では水面に吸着した微生物、イエカ類では水中に浮遊する微生物や細かいデトリタス粒子、ヤブカ類では水底に沈んだ粗大なデトリタス塊を摂食する傾向が強い。オオカ亜科の幼虫は他の蚊の幼虫を捕食する。蛹はオニボウフラ(鬼孑孒)とよばれる。胸から伸びた呼吸管が鬼の角のように見えることに由来する。他の昆虫の蛹と同じく餌はとらないが、蛹としては珍しく幼虫と同じくらい活発に動く。呼吸は胸の「ホルン」と呼ばれる器官を使って行う』とある。この「ホルン」については、恐らく楽器のホルンと同義とは思ったものの、ちゃんとした記載をなかなか見出せなかった(私には誰かのように、こういうつまらないことが気になる悪い癖がある)。原綴りと明確な生物学的記載はBSI生物科学研究所の「衛生昆虫の微細構造」 第 3  (PDFファイル)でやっと現認出来、その「3-4 蛹(pupa)」に蛹であるオニボウフラの『』頭胸部背面に角質化した1対の呼吸角(respiratory horn,または trumpet)がある。呼吸角は中空で,その先端に気門が開口している』とあり、正しくは「呼吸(用)ホルン(またはトランペット)器官」と訳すべきものであることが判明した。リンク先の論文は電子顕微鏡写真も豊富に配されたすこぶる優れた論文である。必見。

「孑孑」は前注の引用に出る「孑孒」が正しく、「廣漢和辞典」によれば「孑孑」は『俗に誤って孑孑に作る』と明記されてある。同辞典には、

「孑」

の音は、

ケツ・ケチ・キツ・キチが正しく慣用音でゲツとする

とあり、

指事文字

で、

「子」の右の肘部分が欠損したもの、いとけない独りの意を表わす

とあって、

「右肘がない」「あまる・あます」「のこる・のこす」「おくれる」「小さい」「短い」「一人・一つ」「戟(ほこ)」「すこやか」「すぐれる」

などの意味を載せ、最後の方に

『ぼうふり。ぼうふら』

とある。因みに「孑孑」と書くと、「ゲツゲツ」と読み、「一つだけ抜きん出ているさま」「孤立しているさま」「独りぼっち」「小さいさま」の謂いで「ぼうふら」の意味は本来はなく、誤字であるとする。

 一方、

「孒」

の方は、音が

ケツ・クヮチ(カチ)・キョウ・ク・クツ・クチ

で、右肘の欠損を意味する「孑」に対し、

「子」の左腕を切り落とした

象形文字

とする(篆書体を見ると左右が違うだけで何故、これが象形なのに「孑」は指事なのか、私にはよく理解出来ない。識者の御教授を乞う)。意味は、

「左の肘がない」「短い」「ぼうふら」

の意を載せるが、熟語は載らない。

 

「豹(やぶが)」「」は「脚」の正字。カ科ナミカ亜科ナミカ族ヤブカ属 Aedes の総称。参照したウィキの「ヤブカ」によれば、

キンイロヤブカ亜属 Aedimorphus

 オオムラヤブカ Aedes alboscutellatus

 キンイロヤブカ Aedes vexans nipponiiwnv

シマカ亜属 Stegomyia

 ネッタイシマカ Aedes aegypti

 ヒトスジシマカ Aedes albopictuswnv

 ヤマダシマカ Aedes flavopictuswnv (しばしばヒトスジシマカと混同される)

セスジヤブカ亜属 Ochlerotatus

 セスジヤブカ Aedes dorsaliswnv

トウゴウヤブカ亜属 Finlaya

 トウゴウヤブカ Aedes togoi

 ヤマトヤブカ Aedes japonicuswnv

に分かれるとある。但し、これは先に示した蚊類全般の蛹であるオニボウフラを示していると思われ、種としての区別的分類の確述的記載とは思われない。]

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