篠原鳳作初期作品(昭和五(一九三〇)年~昭和六(一九三一)年) ⅩⅥ
探梅や裏御門より許さるる
蜜柑山晝餉の煙上りけり
儲けなき鰯をうつて歩きけり
枯野道鰯車の續きけり
遊び女のながきいのりや東風の宮
[やぶちゃん注:「東風の宮」太宰府天満宮のことか。]
砂掘りて松露燒く火を育てけり
[やぶちゃん注:「松露」菌界ディカリア亜界担子菌門ハラタケ亜門ハラタケ綱ハラタケ亜綱イグチ目ヌメリイグチ亜目ショウロ科ショウロ
Rhizopogon roseolu。参照したウィキの「ショウロ」によれば、『二針葉性のマツ属 (アカマツ・クロマツなど)の樹下で見出され、本州・四国・九州』に自生する。『子実体は歪んだ塊状をなし、ひげ根状の菌糸束が表面にまといつく。初めは白色であるが成熟に伴って次第に黄褐色を呈し、地上に掘り出したり傷つけたりすると淡紅色に変わる。外皮は剥げにくく、内部は薄い隔壁に囲まれた微細な空隙を生じてスポンジ状を呈し、幼時は純白色で弾力に富むが、成熟するに従って次第に黄褐色ないし黒褐色に変色するとともに弾力を失い、最後には粘液状に液化する』。『胞子は楕円形で薄壁・平滑、成熟時には暗褐色を呈し、しばしば』一~二『個の小さな油滴を含む。担子器はこん棒状をなし、無色かつ薄壁、先端には角状の小柄を欠き』、六~八『個の胞子を生じる』。『子実体の外皮層の菌糸は淡褐色で薄壁ないしいくぶん厚壁、通常はかすがい連結を欠いている。子実体内部の隔壁(Tramal Plate)の実質部の菌糸は無色・薄壁、時にかすがい連結を有することがある』。『単純な球塊状の子実体を形成することから、古くは腹菌類の一種として扱われてきたが、マツ属の樹木に限って外生菌根を形成することや、胞子の所見・子実体が含有する色素成分などが共通することに加え、分子系統学的解析の結果に基づき、現在ではヌメリイグチ属に類縁関係を持つとして、イグチ目のヌメリイグチ亜目に置かれている』。『安全かつ美味な食用菌の一つで、古くから珍重されたが、発見が容易でないため希少価値が高い。現代では、マツ林の管理不足による環境悪化に伴い、産出量が激減し、市場には出回ることは非常に少なくなっている。栽培の試みもあるが、まだ商業的成功には至っていない』。『未熟で内部がまだ純白色を保っているものを最上とし、これを俗にコメショウロ(米松露)と称する。薄い食塩水できれいに洗って砂粒などを除去した後、吸い物の実・塩焼き・茶碗蒸しの具などとして食用に供するのが一般的である。成熟とともに内部が黄褐色を帯びたものはムギショウロ(麦松露)と呼ばれ、食材としての評価はやや劣るとされる。さらに成熟が進んだものは弾力を失い、色調も黒褐色となり、一種の悪臭を発するために食用としては利用されない』とある。私の亡き母は鹿児島の大隅半島中央の岩川に育ったが、若い頃にはよく兄とともにこのショウロを採りに行ったと語っていた。私は哀しいかな、食べたことがない。]
住吉の垣のうちなる松露搔
[やぶちゃん注:「住吉」恐らくは現在の鹿児島県鹿児島市住吉町(ちょう)であろう。旧鹿児島城下下町住吉町で鹿児島市の中部に当たり、桜島の対岸の薩摩半島東の根元にある。]