私の務 山之口貘
私の務
世人よ 汝等よ
見よ!!
日没の頃の我が沈默を
おれの働きの一時の憩ひだ
日よ……
強き強き日輪の光よ
おれは働きつゝ
腹の中で汝に囁く
――おゝ汝のギラギラする
光の中にあつて
塵埃の中を盲人
困難の中を
偉大な偉大な力を担ひ
かくて果てなき地平を
おれはひねもす這ひ行く
力出せば――
何處かに甲斐の賜は
日よ汝の光より
価價ある光輝を放ち
苦を忍び來るおれの身を
手まねきつゝ歡喜湛えて
幸福の地に呼ぶ
噫々
日!! と
たのもしき大自然の地平とを
無言に 只無言に
[やぶちゃん注:底本では末尾に下インデントで『一九二一・六・二四』とある。大正一〇(一九二一)年八月十一日附『八重山新報』に次の「自分」と合わせて並載されたものと思われる。「ギラギラ」の後半は底本では踊り字「〱」。]
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